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なぜ「低身長メンズ」は服が選びにくいのか?|“センス”よりも大事な“サイズバランス”の話

私自身、165cmの身長を長年コンプレックスに感じてきました。
若い頃は「何を着ても似合わない」「服に着られている感じがする」と悩み、
鏡の前で“おしゃれの正解”を探し続けていました。

そんな中で気づいたのは、ファッションで一番大事なのはサイズバランス構造だということ。
某有名ファストファッションブランドで販売・接客を経験し、個人向けスタイリストをやって
のべ1,000名以上の着こなしを見てきた中で、
「似合う人」と「似合わない人」を分けるのは““整えられた比率”でした。

このメディアでは、低身長という個性を前向きに捉え、
「自分に似合う構造」を理解することで、
トレンドのスタイルを自分なりに“構築”していくための知識と実践法をお届けしていきます。

目次

目次

1.低身長メンズの服選びを変えるのは、“センス”ではなく“サイズバランス”

2.「低身長=服が合わない」は思い込みではなく、“服の作りの問題”だった

3. そもそも「低身長」や「サイズバランス」とは何か?

4.【構造分析①】既製服のパターン設計は“平均体型を基準に比率拡縮されている”

5.【構造分析②】低身長メンズが“服に着られて見える”理由=重心バランスのズレ

6. 165cmの筆者が感じた“3cmの違和感”──UNIQLOオーバーサイズ検証

7.【まとめ】似合わない”を脱するカギは、“サイズバランス”を理解して整えること

1.低身長メンズの服選びを変えるのは、“センス”ではなく“サイズバランス”

「センスがない」「何を着ても似合わない」と感じている人の多くは、
実は“センス”ではなく“サイズバランス”を誤解していています。

服の印象を決める要素は、素材・色・サイズの3つですが、
最も影響が大きいのは「サイズ=バランス」です。
どれだけ上質な素材を選んでも、サイズが合っていなければ台無しになります。

米国の老舗ファッション誌 GQ Magazine(Condé Nast 社刊) は、
メンズスタイル分野で世界的に最も影響力のあるメディアの一つですが2023 年 3 月 10 日に公開された特集
Menswear’s “Golden Ratio,” Explained by the Experts』では、
複数の著名スタイリスト・デザイナーが「黄金比=1 : 1.618」や「1/3 – 2/3 の視覚分割」が
いかに“整って見えるスタイル”を作るかをプロの目線から解説しています。

“Great style is often a matter of proportion—the 1/3 and 2/3 rule that our eyes naturally find pleasing.”
(優れたスタイルとは、1/3 と 2/3 の法則という、人の目に心地よい比率の問題だ)

と紹介されています。
この特集は、学術的知見と現場の審美眼の双方から
スタイル=プロポーション(比率)の問題」であることを
一般読者にもわかりやすく示した記事として、世界的に参照されている代表的なファッション記事です。
つまり、ファッションとは感覚ではなく構造理解であり、
「似合う人」と「似合わない人」を分けるのは、センスではなく、比率を見抜く力なのです。

2.「低身長=服が合わない」は思い込みではなく、“服の作りの問題”だった

「服が似合わないのは自分の体型のせい」——そう思い込んでいないでしょうか。
実際は、既製服の設計基準が自分に合っていないことがほとんどです。

アパレル製品は、「日本の平均身長170 cm前後」を基準に設計されており
160 cm前半の男性が着ると、袖や裾が余り、肩が落ちてしまてしまいます。
つまり、「似合わない」は構造的なズレの結果でなのです。

『The Apparel Design Handbook』(Fairchild Books, 2022)では、

“Ready-to-wear garments are constructed through a single-scaling of the standard body form, without reflecting individual variation.”
(既製服は標準体型を単一スケーリングしたものであり、個体差を反映しない)

と指摘されています。
つまり、「似合わない」のはあなたの体型ではなく、平均値中心の“服の構造そのもの”が原因なのです。

3.そもそも「低身長」や「サイズバランス」とは何か?

厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査」(※)によると、
日本人男性の平均身長は 30〜50代でおおむね171.5cm前後 です。
国内アパレルブランドの多くは、この平均値を基準に 165〜175cmを“設計レンジ” として商品を作っています。

したがって、低身長とは、この平均より下に位置し、かつ服の設計レンジ(165cm未満)から外れる体型を指します。
この“設計外ゾーン”に該当する人ほど、
袖丈や着丈の長さ・重心の位置に違和感が生じやすくなります。

さらに、ZARAやH&Mなど欧州ブランドは175〜180cm基準の設計であるため、
Sサイズでも日本人には大きく感じられることが多いです。

一方、UNIQLOやGUといった日本ブランドはアジア人体型を想定して設計されており、
低身長体型でも比較的バランスを取りやすい構造になっています。

※出典:厚生労働省『令和5年 国民健康・栄養調査』
第14表 身長・体重の平均値及び標準偏差(e-Stat)

4.既製服の構造:パターン設計は“平均体型の比率”を拡縮しているだけ

アパレルのサイズ展開は、「グレーディング」と呼ばれる工程によって作られます。
これは、基準サイズ(通常M)をもとに、着丈や袖丈を一定比率で拡縮する方法です。

この方式は効率的ですが、実際の体型差を反映していないため、
身長が低い人はバランスが崩れやすくなります。
つまり、Sサイズを選んでも“170cmモデルの縮小版”に過ぎないのです。

結果として、160cm台では
「丈が長い」「袖が余る」「肩が落ちる」といった印象が出やすくなります。
この構造的ズレが、「似合わない」と感じる最大の要因です。

5.低身長メンズが“服に着られて見える”理由=重心のズレ

「服に着られている」と感じる最大の理由は、服の設計と身体のフィット構造がずれていることにあります。
多くの既製服は身長170cm前後を基準に作られており、見た目の重心が身体の中央に来るように設計されています。
しかし、160cm前半の男性がそのまま着用すると、着丈が長く・脚の見える面積が減り・全体の重心が下がって見える傾向が生じます。

この現象は感覚的な問題ではなく、科学的にも裏付けられています。
Li J. らによる研究 “Tailoring Garment Fit for Personalized Body Image Perception”(2024)では、
「服のフィットは着用者の体型の見え方(体格スケール認識)を左右する」ことが明らかにされています。
この実験では、デジタルアバターに異なるサイズのTシャツを着せ、
ゆとり量(ease)が変わることで“体型の見え方”がどのように変化するかを定量的に分析しました。

つまり、低身長メンズが「服に着られて見える」と感じるのは、
身長や骨格の問題ではなく、服の設計(フィット構造)と体のサイズバランスが噛み合っていないことによる視覚的効果なのです。

6.165cmの筆者が感じた“3cmの違和感”──UNIQLOオーバーサイズ検証

今回の検証には、UNIQLO「エアリズムコットンオーバーサイズTシャツ(5分袖)」2025年春夏モデルを採用しました。
理由は以下のとおりです。

  • 日本ブランドであり、アジア人体型を前提に設計されている
  • オーバーサイズというトレンドテーマを“サイズバランス”の視点から検証できる
  • 定番商品で再現性が高く、誰でも同条件で試せる
  • 他メディアで「低身長×オーバーサイズ」を構造的に分析した例が少ない
  • サイズデータが明確で、客観的に比較可能

参考: UNIQLO公式サイト/エアリズムコットンオーバーサイズTシャツ(5分袖)

サイズ着丈(cm)肩幅(cm)身幅(cm)袖丈(cm)※採寸印象・バランス
S665152.523全体にまとまりがあり、すっきり見える。腰位置が高く見え、重心バランス◎。
M6952.555.5243cm長くなることでやや“間延び感”。肩が少し落ち、脚が短く見えやすい。
L725458.525袖も長く、肩幅も広がるため「服に着られている」印象。低身長では重心が下がりがち。

この検証で得られた結論は明確です。
「着丈が3cm長いだけで、脚の比率が下がり“バランスが崩れる”ことが実感できました。

Sサイズでは腰位置が高く、全体がコンパクトにまとまるのに対し、
Mサイズ以降では“服の構造的重心”が下がり、印象が一気に変わります。

スタイル上Sサイズでもオーバーサイズの印象にはなりますが、筋トレなどで身体つきががっちりしている人や、タックワイドなど太目のパンツとバランスを取って着こなしたい上級者など「Mサイズ」を着用したい場合の実践ポイントは次の3つです。

袖を1〜2回ロールアップして抜け感を出す
→ 二の腕の長さを調整し、縦比率を保つ。
パンツイン or 前だけインで腰位置を上げる
→ 全身の重心を中央〜上に引き上げる効果。
ボリュームのある靴で下半身の重心を補う
→ ソール厚のあるスニーカーやブーツを選ぶと、全体の縦ラインが整う。

この3つの工夫を意識するだけで、
“服に着られる”印象を防ぎ、身長を変えずにスタイルの印象を引き上げることができます。

7.まとめ:“似合わない”を脱する鍵は“サイズバランス”の理解にある

要点まとめ
・「似合わない」は体型の問題ではなく、服の設計上のズレ
・既製服は170cm基準で設計されている
・グレーディングでは個体差(脚長比・重心位置)が反映されない
・重心が下がると印象が幼く見えやすい
・“サイズバランス”の理解こそ、低身長ファッションの第一歩

ファッションの3要素「素材・色・サイズ」の中でも、
最も基礎となるのはサイズバランス。
素材やトレンドは、正しい比率の上にこそ活きます。

服の構造を理解し、自分に合った比率を知ることで、誰でもスタイルは変えられます。
おしゃれは“才能”ではなく、“理屈”と“理解”で作るもの。
身長や体型は変えられなくても、服の設計構造と自分のバランスを知ることで、
「似合わない」を「自分らしい」に変えることができます。

ココ・シャネルはこう語りました。

“Fashion is architecture: it is a matter of proportions.”
「ファッションは建築よ。それはバランスの問題なの」
― ココ・シャネル

“サイズバランス”という設計を理解し整えることこそ、低身長メンズの最大の武器になるのです。

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